8月17日、18日の一泊二日の日程で、富士登山に行ってきました。

「人生で一度は富士山に登る」。多くの人の人生のバケットリストに入っていると言われる富士登山ですが、私自身も「いつかは登ってみたい」と思いながら、気がつけば51歳になっていました。

「いつかやる」は、放っておけば「永遠のいつか」になります。「やるやる」と言いながら結局やらない、「やるやる詐欺」になってしまう。これは、そろそろ本当にまずい。

そんな小さな焦りを感じていたとき、毎年登頂を重ねている鈴木淳牧師に同行させていただける好機に恵まれました。

国立のぞみ教会から3名、鈴木先生が所長を務める「フレンドシップあさひ」の職員の方々を合わせた総勢9名のパーティーで富士山を目指すことになりました。

久しぶりに新調した登山靴に足を通し、準備を進めていた矢先、前週にまさかのインフルエンザに罹患するという波乱もありましたが、不思議と当日にはすっきりと快復し、17日の朝を迎えることができました。

一日目 スバルライン五合目〜八合目山小屋「元祖室」

初日は、富士スバルライン五合目から八合目の山小屋「元祖室」まで。標高3250メートルを目指します。

装備のチェックなどを受け、午前9時40分、吉田ルートから登山開始です。

出発前までは雨の予報もあり、天候が心配されていました。しかし、ふたを開けてみれば、二日間とも程よく曇り。直射日光に照らされることもなく、それほど暑くもありません。富士登山には最高とも言える天候に恵まれました。

登り始めると、「はじめまして」の方々とも、いつの間にか親しくなっていきます。歩きながら話をし、休憩すればまた話す。息が切れてくれば声を掛け合い、励まし合う。山というのは、不思議なところです。言葉の数は少なくても、同じ重力を分け合っているという実感が、人と人の垣根を静かに溶かしていくようでした。

もちろん、楽な登山ではありません。曇っていても息は切れます。岩場では足を大きく上げ、よじ登るように進みます。汗もたくさんかきました。それでも、周りの人たちと声を掛け合いながら、一歩一歩進んでいきました。

そして今回の登山には、私にとって特別な意味がありました。

一緒に登った雅恵ちゃんは、私が小学校3年生、4年生のときにお世話になった、希望が丘教会の教会学校の先生です。そして、鈴木淳牧師は、私が中高生だった頃の教会学校の先生でした。

子どもの頃に教会で出会い、お世話になった二人の先生と、50歳を過ぎた今、一緒に富士山を登っている。

人生の不思議さと、目に見えない大きな導きを思わずにはいられませんでした。

そう考えると、今回の富士登山は、単なる「人生で一度はやってみたいこと」の一つではなかったのかもしれません。これまで与えられてきた人とのつながりが、思いがけない形で今につながっている。そのことを実感する時間でもありました。

神さまの恵み以外の何物でもないな」と、登りながら思いました。

予定よりも早く、午後2時頃には山小屋に到着。早めにチェックインさせてもらい、山小屋の前で景色を眺めながら一休み。

標高3250メートルで飲む350mlのスーパードライは700円カップラーメンも700円。

普段なら「ありえない」と思う値段ですが、この場所ではそんなことはどうでもよくなります。仲間と一緒に飲むビール、一緒に食べるカップラーメン。それだけで最高のごちそうでした。

午後4時30分には夕食をいただき、深夜2時過ぎの出発に備えて、しばしの休息。

二日目(八合目〜山頂ご来光〜お鉢巡り〜剣ヶ峰〜下山)

翌朝、というよりはまだ深い闇が支配する午前一時過ぎ。 興奮冷めやらぬまま寝床を抜け出し、お弁当を胃に収めて、二時過ぎに山頂へ向けて出発しました。

ヘッドライトの光が連なる登山道は適度に混み合っていましたが、渋滞がかえって歩幅を落ち着かせ、足を休ませてくれます。冷涼な夜気の中をゆっくりと進み、4時30分頃に山頂へと辿り着きました。

東の空が、紫から茜色へとゆっくりと階調を変えていきます。 足元には見渡す限りの雲海が広がり、やがて光の粒が溢れ出すようにして太陽が顔を出しました。

今年で十七回目の登頂となる鈴木牧師が「これまでで最高の天気だ」と言うほどの、圧倒的なご来光でした。神秘的な静寂に包まれながら、ただ光を受け止めるだけの贅沢な時間が流れていきます。

冷え切った身体に注ぎ込んだ山頂の一杯1300円のインスタント味噌ラーメンは、まさに「プライスレス」な味でした。

食後は、富士山の火口を一周する「お鉢巡り」へ。日本最高峰の地点である標高3776メートルの剣ヶ峰にも立ちました。

眼下に広がる富士五湖の美しい輪郭も愛でました。雲の上から見下ろす地上はあまりに小さく、日頃抱えているあれこれの思い煩いがいかにささやかなものであるかを教えてくれるようでした。

富士山に一度も登らぬバカ、二度登るバカ」という古いことわざがあります。

午前8時半からの下山道は、砂利に足を取られながら延々と続く、終わりの見えない九十九折(つづらお)りでした。日頃から走り込み、脚力には自信があったはずの私でさえ、最後は心が折れそうになるほどの過酷な道でした。あの砂埃の下り道を思い出すと、「登るのはまたいつかあってもいいけれど、下りはもうご馳走様かな」というのが正直ないまの気持ちです。

それでも、正午頃に全員が無事に五合目へ辿り着き、山中湖の温泉で二日間の汗を流しながら語り合ったとき、残っていたのは純度の高い感謝だけでした。

体調の不安も天候の心配もすべて守られ、旧知の恩師たちとの時を温め直し、新たな出会いにも恵まれた二日間。

富士山の頂上から見た日の出は、これから先もきっと忘れないでしょう。「いつかは富士山」と思っているだけでは、いつまでたっても登れません。今回、思い切って「いつか」を「今年」に変えてみて、本当によかったと思います。

さて、せっかく登山靴も買ったことです。これからは、たまには山にも登ってみようかな。

富士山は……どうしようかな(笑)

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